K男の話02 -みみっちぃ男-

K男の猛烈アプローチにより付き合うことになったゆづみそとK男。中距離恋愛でした。

わたしは都内の実家、K男はS玉県の実家に暮らしており、その距離は電車で3時間程でした。

うちから1時間、K男の家から2時間程度のところにわたしの大学があったため、わたしの学校終わりに会うときは大学方面の大きな駅で会うことが多くなりました。

わたしは定期券があり、定期代は親が出してくれていたので交通費0でしたが、K男は往復2千円程かかっていました。毎回2千円を負担させるのは悪いと思い、わたしは毎回半額の千円を負担すると申し出ました。わたしもバイトをしていたし、自分に会いにきてくれているのでそれくらいはと思ったのです。K男はその申し出を受け入れ、毎回その駅で会う際にはわたしから千円を受け取っていました。

それが毎度の習慣となっていた頃、その駅からK男と共に電車で別の駅に向かうことになったある日。K男は駅の券売機で切符を買うと言いました。この頃は定期もSuicaPASMOの時代。当然K男もICカードを使うと思っていたので、「え、切符?チャージじゃなくて?」と思いました。まぁでも、切符買うかICカード使うかなんて個人の自由なので、そこまで深く考えませんでした。

しかし、目的の駅へ到着し、改札を通るときでした。その駅はいつも会う駅とは比べ物にならないほど小さな駅で、改札数も利用客も少なめでした。わたしが改札にICカードを通して通過した直後、背後から「ピヨッピヨッ」という電子音が聞こえました。音のした方へ目をやると、電子音の原因はK男でした。そう、この男、なんと小人用の切符を購入していたのです。

利用客の少ない駅でしたから、当然駅員も電子音に気づきます。

「あ、ちょっと君!」

駅員はK男に声をかけ、止めようとしましたが、K男は「やべっ」と言うと一目散に駅の外へ出ていきました。

わたしは他人のふりをしようと、あえてK男の後を追うようなことはせず、ゆっくり駅を出て、あたりを見回すと、駅近くのコンビニにK男はいました。

わたしが問いただすと、K男は電車を使う際は毎回小人用の切符を買い、正規の電車賃の半額で電車を利用していたと言うのです。つまり不正乗車です。わたしに会いに、いつもの駅へ来るときも毎回。

不正乗車の常習犯というだけでドン引きですが、つまりコイツは、通常往復2千円かかる電車賃を半額の子供料金千円で利用していながら、わたしから千円を受け取っていたのです。つまりわたしだけが奴の交通費を負担し、奴は交通費0で通ってきていたのです。

信じられない。みみっちすぎるし、不正乗車は犯罪行為です。

…なのですが、若かったわたしはお花畑全開なので「そこまでしてわたしに会いにきてくれてたんだ!」と思ってしまい、今後は不正乗車しないし、わたしも半額負担はしないという約束で許してしまったのだった…ほんとにどうかしてるよわたしも…。あーぁ。